
- 心理的安全性がない職場はブラックと聞くけど、具体的にどういうこと?
- マネジメントってどうやっていくのがいいの?
- 上司からの監視が厳しくて参ってしまう
マネジメントに関する上記のような悩みは、上司・部下ともに尽きません。
パワハラが社会問題になったり、働き方改革やコロナ禍でのリモートワークの拡大など労働環境はここ数年で大きく変化しました。
今回は組織にとって重要な”心理的安全性”と”マイクロマネジメント”、”マクロマネジメント”について解説します。
心理的安全性とは?

心理的安全性がある、とはどういった状態を指すのでしょうか。
また、心理的安全性がない状態はどのような弊害があるかを解説します。
心理的安全性の定義
まず、心理的安全性の定義からご紹介します。
ハーバード大学で組織行動学を研究するエドモンソン氏による提唱は以下の通りです。
チームの心理的安全性とは、チームのメンバーが、リスクを冒し、自分の考えや懸念を表明し、疑問を口にし、間違いを認めてもよく、そのいずれをもネガティブな結果を恐れずにできると信じていること
英語の翻訳のため少し回りくどい表現になっていますが、わかりやすく言うと以下のようなことを言います。
評価や否定を恐れずに、自由に発言したり行動したりできること
日本の企業ではいまだに、上司や自分より上の立場の人間がいると極端に発言数が減ったり、上司への同調しかできない風潮が強いです。
心理的安全性がないことの弊害
心理的安全性がないと、組織の生産性が低くなる・改善が見込めない弊害があります。
エドモンソン氏によると、心理的安全性が担保されていないと4つの不安を感じると述べています。
- 無知だと思われないか
- 無能だと思われないか
- 邪魔をしていると思われないか
- ネガティブだと思われないか
つまり、自身の評価やトラブルが起きることを気にして、思う行動が取れなくなっている状態です。
組織内で自分の意見を出せなくなれば、組織を良くすることも生産性を上げることも難しくなっていくでしょう。
心理的安全性を担保するためには
それでは、心理的安全性を担保するためには、ミスを責められないこと・自分が評価されている実感を持てることが重要です。
エドモンソン氏は具体的に以下のようなアンケートを取れば心理的安全性を把握できると述べています。
- ミスをしても責められない
- 問題点や難しい課題を提起できる
- 人と違うことを受け入れる
- リスクを冒しても安全性が保たれる
- 他のメンバーに助けを求めやすい
- 意図的に私の努力を損ねるような行動を取る人はいない
- 一緒に仕事をしていると、自分にしかないスキルや才能が評価され、活かされる
組織において、ミスが起きた際に重要なのは、正確な状況を把握して原因を突き止めることです。
人を責めても、「自分の不注意です」「〇〇さんが言ったので」「チェック不足です」などとあいまいな答えしか返ってこず、ミスの削減には全くつながりません。
また、悪い評価を恐れてスキルの高い人が意見を言えなくなると、組織の発展は望めません。
よって、組織の中で最も重要なのは”ミスをしても責められない”ことと”自分にしかないスキルや才能が評価され、活かされる”ことです。
マイクロマネジメントとは?

次に、マイクロマネジメントについて解説します。
マイクロマネジメントとは、上司が部下に対して必要以上の監視や指導を行うマネジメント方法です。
本章ではマイクロマネジメントの概念やメリット・デメリットをご紹介します。
マイクロマネジメントの概念
マイクロマネジメントという言葉は、1950年代のマサチューセッツ工科大学で使われ始めたと言われています。
元々は、製造業の生産ラインなどで生産性向上のために採用されたマネジメント方法です。
当時は悪い意味で使われるのではなく、いかに効率的に人間をマネジメントするかという観点で使われていたことが分かります。
現在のマイクロマネジメントは、上司が過剰に部下を管理しようと行きすぎた指導や監視を行うことを指す場合が多いです。
背景としては以下が挙げられます。
- 働き方改革で労働時間が減少しコミュニケーションが不足している
- 転職等人員の流動性により上司の権威が示しづらい
- コロナ禍以降リモートワークの増加により業務把握が難しい
マイクロマネジメントのメリット
マイクロマネジメントを採用するメリットには以下が挙げられます。
- 製造ラインなど品質と効率を常に保つ必要がある職場では有効
- 新入社員や異動したての従業員には上司による管理が重要
- ペアになって行う仕事の場合の相手には有効
単純作業を繰り返す業務や、新人教育の場ではマイクロマネジメントも効果的に働きます。
マイクロマネジメントのデメリット
次に、マイクロマネジメントのデメリットをご紹介します。
- 部下に主体性が育たず、考える力が身につかない
- 部下が窮屈さを感じ、モチベーションが下がる
- 上司自身も歯止めが効かず、細かいことにストレスを感じてしまう
- チーム目標が”上司の正解を導き出すこと”になってしまう
マイクロマネジメントの程度にもよるものの、常に上司から監視されたり指摘をされると誰しも窮屈さやストレスを感じる場合が多いです。
ビジネスにおいて最も好ましくない状態が、部下が常に上司の正解を求めて仕事をするようになってしまうことです。
市場や顧客に対して向けるべき意識が、全て社内の上司に向かってしまうことは大きなデメリットです。
過剰なマイクロマネジメントの実例
次に実際に筆者が受けた例を交えながら実例をご紹介します。
- 個人間チャットやメールの監視
- 個人間通話時間の把握
- リモートワーク時常にカメラやマイクONを求める
- 業務の進め方に細かく口を出す
- 長時間の叱責や人前での指導で一方的に責める
適切な管理との違いが難しいところはありますが、上記のような例は過剰なマイクロマネジメントと言って良いでしょう。

筆者も会社員時代に過剰なマイクロマネジメントを受けました。
監視されたり些細なことに口を出され、人前で叱責を受けたりすると
心身ともにダメージが大きく、次第に業務時間中に発言しなくなりました…。
業務にルールは必要ですが、必要以上の管理は組織を硬直させると実感しました。
マクロマネジメントとは?
本章では、マクロマネジメントについて解説します。
マクロマネジメントは、マイクロマネジメントの対局にあります。
マクロマネジメントの概要やメリット・デメリットを解説します。
マクロマネジメントの概要
マクロマネジメントは、チームやメンバーに対してゴールや方針を示し、細かな方法は個人に任せるマネジメント方法のことです。
放任主義で個人の責任にすることではなく、大きな目標を達成することが主題で、たどり着くまでの過程に正解はないのがマクロマネジメントです。
上司のマネジメント能力によって良くも悪くも働く可能性があります。
また、上司と部下の信頼関係も重要になることは言うまでもありません。
マクロマネジメントのメリット
マクロマネジメントのメリットは以下が挙げられます。
- 自律的なメンバーを育てることができる
- 年代や性別ごとの考え方を組織に取り込むことができる
- 細かなルールで従業員を圧迫しない
- 監視されることがないため、気持ちよく働くことができる
自律的なメンバーを育てることで、組織はさらに強くなることが期待できます。
また、自由に発言したり、自分の考えの元で仕事を進めることができるため多様性のある組織になるでしょう。
マクロマネジメントのデメリット
次に、マクロマネジメントのデメリットをご紹介します。
- 新入社員など仕事の基本が分からない部下にとってはストレス
- 上司の寛容さと先を読む力がないと、ただの放任になる
- 生産ラインなど品質維持やスピードを合わせて行う業務には向かない
- 自律性とワガママの違いが不明瞭になることがある
マクロマネジメントは、上司も部下も常に成長し続ける意欲的な姿勢を持っていないとマイナスに働く危険性もあります。
放置することとマイクロマネジメントは違うため、上司のマネジメントスキルは特に重要です。
適度なマクロマネジメントの実例
筆者自身もマクロマネジメントを得意とする上司の元でマネジメントを受けたことがあります。
実例を筆者の経験とともにご紹介します。
- 中長期的な目標を立てて共有する
- 目標に沿った頻度で報告会や1on1での指導を行う
- 週報や月報、報告へのコメントで方向性の擦り合わせをする
- 部下のミスや失敗を自分のこととして捉え一緒に解決する
- 任せきりにせず、上司は定期的に状況を確認しアドバイスする
マクロマネジメントは上司のスキルが成功の鍵です。
任せることと指導することのバランス加減が難しいからこそ、過剰なマイクロマネジメントに走ってしまう管理職が多いのかもしれません。

筆者はマクロマネジメントも受けたことがあります。
営業職や主体的に動かなければいけない仕事をするためには、
マクロマネジメントが適していると感じました。
ただ、自身が上司としてマネジメントする際に、方向性の共有は
簡単なことではないなと思ったことも事実です。
マクロマネジメントは、上司のマネジメントスキルも必須です。
これからは心理的安全性の高いマクロマネジメントが必要
本記事では、心理的安全性とマイクロマネジメント・マクロマネジメントについてご紹介してきました。
筆者はマイクロマネジメントもマクロマネジメントも体験しましたが、圧倒的にマクロマネジメントの方が力も付く上に自信にもつながります。
自分で考えずに指示通りに動くだけの作業が必要な業務は今後、ロボットやAIに取って代わられる業務の対象となるでしょう。
時代の流れを読み、人の購買欲を掻き立てるビジネスを続けていくためには、上司の顔色ばかり見る組織では未来はありません。
メンバーが自身の意見を伝えることができる環境を整えることと、メンバー自身がビジネスの方向性を理解して主体的に動く必要があります。
また、上司自身のマネジメントスキルを常に磨きながら、適切なマクロマネジメントを行うことが重要です。
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